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Story 02

 

OfficeItselfの研修では、よくみる学びの光景から、さらに個人のバリアを破り、チームとしてもボーダーラインを越え、人として互いを深く理解し合い、チームと個人が創り出す未知の体験をもちかえってもらいます。ここでは、ある研修で起きたことを紹介します。

チームに分かれて研修は進んでいました。最初はよそよそしかったチームが、うちとけあい、互いに信頼関係がうまれ、個人が言いたいことを安心して話せるようになっていました。

 

チームとしては悪くはありません。でもそのチームにはまだ何か足りないものがありました。動きそうで動かないチーム、肝心な時にばらけてしまうチーム、一歩深まっていないチームなのです。その足りない何かが、チームの信頼関係を一気に崩す危うさをもっていました。

 

研修は、チーム内で互いの不安について話すワークに進みました。
そのチームも膝をつきあわせて車座になったわけですが、やはり悪くないけど、何かもう一枚壁があるように見えます。

 

講師である私が、チームを観察すると、いつも笑顔で話を聞きながら黙っている男性の存在が気になりました。その男性が話す番になりましたが、笑顔の奥にまだ何かが隠されている感じがしました。

 

そのときチームメンバーの一人が言いました。
「ニコニコ笑ってるのはいいのだけど、何か伝わらないんだ」
「まだもうちょっと何か言いたいんじゃないか?」

それはチーム全体が感じていたことでした。


その場が感じたことを代表してチームメンバーの一人が声にした瞬間でした。
場の声がブレイクポイントを創りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで講師が関わります。涙を流した男性にチーム全員の顔を見るよう促し、男性が起こした場へのインパクトを感じてもらいました。


『あなたがニコニコしながらでも涙を流し、
 本当の気持ちを話しているとき、場はどうなってる?
 あなたが及ぼした影響は尋常なものではなく、
 相手の心の奥まで届き、そして聞いている本人に
 自分の本当の声を出す事がどれだけ美しく力強いことか、
 という気づきを与えている。』と、伝えました。

 

これをきっかけに男性は変化しました。このチームは、信頼関係が深まり、本音で関わり合える安定感を持ち、次のステップに進んでいきました。

 

「場」が「個人」を動かし「個人」の繊細な声がさらに「場」を動かした事例です。

笑顔の男性は一瞬凍りつき、そのまま押し黙ってしまいました。周りも固唾を飲んで次の言葉を待っています。男性は、ゆっくりと本音を話し始めたのです。自分がなぜニコニコしているのか、それが癖になってしまったのはなぜか。

 

『昔、周りの人に理解されなかった。
 いつも自分の表情や存在自体が周りを暗くさせたり、
 いい雰囲気にさせてないということにあるとき気づいた。
 言われもした。

 そこから自分は必死にいつも笑顔でいることを心がけようとしてきた。
 だからやめられないんだ。』

 

笑顔で話しながら男性の瞳から涙が溢れ頬を流れます。とても辛い話ですが、男性の本音が表情や仕草として現れ始めています。
 

真実が語られたその場は揺さぶられます。男性の繊細な声がチーム全体を動かし始め、さらに真実に近づいていきました。

 

 “場”は個人の集合体ですが、集合体になるととたんに生き物になります。この“場”という生き物はやっかいでもあり、ときにものすごい力を発揮する。個々 人はとてもいい人なのに、なぜか場となるとエネルギーが停滞し、動かない。何かのストッパーがかかったように個性を殺し合いつづける。

 

逆に“場”が動き始めると、個人の力をはるかに超えた、驚くような結果を出す時がある。力となる。個人のモチベーションを超えた、場のモチベーションは個人のポテンシャルを大きく引き出す事があります。

一方、生き物である“場”に個々人はなんらか影響を与えています。何も言わなくても、しなくてもそこに存在するだけでもうその人はその生き物の一員なんです。日本人のグループに起こりがちなのが、何も言わないという選択。様子を見ているのか、言いたい事がないのか、あっても抑えているのか。興味がないのか。無いフリをしているのか。

何も言わないという表現は同じでも、その人がどういう意図でそこに存在するかは一発でわかる。

黙っていても影響力がある。その意図が伝わり場を創るのです。その微細な声はその場を創るのです。

 

私見ですが、究極は、その場に居る人たちが「どう生きたいか?」「自分をどう生かされたいか?」ということにつながっていきます。そして自分がどう生きたら、どう生かされたら場(人生、組織、家族・・・)が動いていくのかを知る事、やり続ける事なのではないかと思うのです。

 

  • 個人の成長と場の成長の両方を同時に気にかけ、その相乗効果をはかる

  • 個人からのアプローチ、場からのアプローチの双方のやり方を知っている

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